イン神田決勝観戦記 三上 龍玲

 始めに決勝進出者と準決勝までのポイントを紹介しよう。起家から浜田敬一(一般)51.0P、大沢健二ツアー74.8P、沢井麻里(一般)106.8P、忍田幸夫プロ113.3P。
浜田は過去にもμカップ決勝進出の経験がある。沢井もμの公式戦の常連で、場慣れした強さを感じさせるタイプ。ポイントから見ると、忍田と沢井の勝負に大沢と浜田がどこまで食いこめるかといったところだろう。

 東1局は忍田が浜田から2000点のアガリ。大量得点が必要な浜田にとって、親があっさり蹴られたのは痛い。あとは南場の親にかけるしかない。

 東2局。親の大沢がメンピンツモドラ1の2600オール。ここから追撃体勢に入れるか。しかし次局、場が大荒れし、沢井の暴圧といってもいいアガリが生まれてしまう。
5巡目に沢井が2枚目のをポン。1枚目は見送っていた。そして6巡目、浜田が切ったション牌のもポン。は見えていない。場が一気に緊張する。

浜田の切りはここからで、これは批判されるいわれはない。
焦点は親の大沢の11巡目。

ポツンと浮いたはション牌のドラ。タンヤオ手の大沢にとっては邪魔なことこの上ない。しかも切り出す前に、下家の沢井にポンポン仕掛けられて打ちづらくなってしまった。

これがここまでの沢井の捨て牌。ちなみに沢井の最終手出しの後、忍田がを通している。忍田も役なしながらテンパイで押していた。
大沢はここで積極果敢にうってでた。浜田が切ったをポンしてをカブせたのである。この大沢が切ったを沢井がチー。これで大沢、沢井、忍田の3人テンパイ。まだ東2局だが、この局を制したものが大きなアドバンテージを握るのは間違いない。
2巡後、忍田は無スジのをつかんでテンパイを崩す。かわって上手く回った浜田がテンパイを入れて追いついた。
そして14巡目。「ツモ」沢井の声だ。ツモった牌は。このときはション牌で、また他3人の手にも1枚もなかった。ツモ牌のを見た瞬間、対局者およびギャラリー皆に衝撃が走ったに違いない。
沢井以外の者にとっては幸いなことに、アガリ手は小三元。マンガンですんだ。しかし、チーからを手繰り寄せ、全員テンパイの場を制したこのツモアガリには、ただのマンガン以上の価値があると言ってもいいだろう。事実これではずみをつけた沢井は、ここから怒涛のラッシュを見せる。

次局、親を迎えた沢井。終盤にソーズの連続引きでこの形。

前巡にをツモってを切ったところ。ここでが鳴けて打でチンイツテンパイ。
このとき大沢はカン待ちのタンヤオドラ1のダマテンをはっていた。そこにツモで沢井に飛び込んでしまう。

この親マンで大沢をつぶした沢井は、今度は忍田から3900、5800とダマテン2連発。これで沢井と忍田の差は4万点と、圧倒的な大差になってしまった。

東4局。やっとまわってきた忍田の親。しかし、大沢が6巡目にリーチ。さらにそれをかわしに、沢井が果敢に仕掛けて無スジを切っている。沢井にすれば振りこんだところで進行料、局が進んでよしということであろう。忍田も参戦したいところだが、いかんせんツモが効かない。そしてここでも勢いの差か、大沢が沢井のロン牌をつかんでしまう。

南1局その1。親の浜田のリーチに大沢がモノ凄い手で追っかけた。

がドラで、安目出アガリでもバイマン。もし、ツモれば「沢井で決まりか」となりつつある雰囲気を、一撃で吹き飛ばすことができる。
しかし夢はここまでだった。リーチ後1度もツモらせてもらえず、浜田が2000オールのツモアガリ。浜田はその2も忍田から5800をアガりふんばりを見せるが、その3では逆に忍田が浜田から3900出アガリ。

南2局。親の大沢、12巡目になってもテンパイが入らない。それを尻目にテンパイの忍田と沢井がぶつかりあう。ここでもホンイツシャンポン待ちの忍田が、ピンフ3メン待ちの沢井に負けてしまうのは、もうどうしようもないのか。

南3局の沢井の親。ここはもうアガる必要はない。当然しっかり守って明け渡す。
そしてオーラス、忍田の親。忍田にピンフ三色ドラ1のリーチが入ったところで、沢井が役なしカンチャンをツモ。最後も自らの強さで戦いに幕を閉じた。

 沢井の勝因は、大舞台に飲まれずとにかく普段通りのマージャンを貫いたことだろう。きれいな牌さばきから放たれる、小気味良いリズムの模打。日和らないまっすぐな攻め。常に冷静でフラットな精神力。初の決勝戦でこれほど普段とまったく変わらず打てる人は、そうはいないと思う。忍田、大沢の2人の選手をまっこうからやっつけての優勝は見事というほかない。沢井さん、おめでとうございます。(文中敬称略)