第4回関西インビテーションカップ観戦記
麻将連合ツアー選手・小田宏一
システム:認定プロをはじめとするシード選手と、予選を勝ち上がった選手合計40名で争われる。 ポイント持ち越しの6回戦。 4回戦進出16名準決勝(5回戦)進出8名。決勝(6回戦)進出4名。(文中敬称略)
 
準決勝A卓 数字は4回戦までのポイントを表す。Pは認定プロ。Tはツアー選手。
起家から、榎本将夫(一般) 90.6、綴木慎介(一般) 44.0、楠橋思(T) 47.8、藤田司(一般) 37.8

榎本は大きなラスを引かない限り、決勝に残れるだろう。ただ、ポイントを持っているがゆえに、大事に往きすぎて和了を逃してしまい、他家にツモられたりしてラスを押し付けられるのもよくあること。あとの3人は何とかして榎本を(最低でも3着に)沈めてトップを取っておきたい。
 
まず、榎本に注目してみた。東1局の綴木のリーチも難なく凌ぎ、東2局ではカン(場に2枚切れ)とのイーシャンテンで、を引きピンフテンパイ。これがあっさりとアガれる。榎本の状態の良さが伺える。まだ点棒移動も少ないのだが、こういう場面を見ていると、榎本はそう簡単には3者の注文どうりにはならなさそうだ。
 
ここまでは比較的おとなしかったのだが、次局からいきなりヒートアップした。

東3局その1、藤田8巡目リーチ。同巡に楠橋がチー。打した牌がション牌の。どう考えてもチーの後に「テン」がついている。決着はすぐにつき、藤田が楠橋に2900放銃。

  チー ロン ドラ

楠橋はその2・その3でそれぞれ、1500・2900を綴木からアガり、迎えた東3局その4(ドラ))で手がぶつかる。

13巡目藤田 

これに榎本が追いつく。

15巡目榎本 

榎本のテンパイ打がション牌の。自然に押し出される形であるならば勝負や!とばかりに。ポンされてから危険牌を引いてしまえば、そこでオリでいいとのことだろう。この東を楠橋がポン。
私からは楠橋の手が見えていないが、まずポンテンだろう。3つ巴の勝負か?と思ったのだが、あがったのは綴木。

 ポン  ロン

放銃は楠橋。ドラがなくて(2600で)ホッとしただろう。
 
東4局その1 東家の藤田が11巡目にテンパイ。

  ドラ

これに高めで飛び込んだのが綴木。
続くその2で藤田が仕掛ける。

  ドラ

ここからダブをポンして打。七対子なら9600だが、仕掛けることにより、あがれば最低でも跳満、あわよくば倍満になる。
この仕掛けで、榎本に流れたのが

  ツモ 

楠橋と藤田にとってはこのアガリは1300・2600の2倍にも3倍にも思えたのではないだろうか。せっかく並びが出来た矢先のことである。双六でいえば「ふりだしにもどる」のマスを踏んでしまったようなものだ。

南場の観戦位置は楠橋から。

南2局その1で、親番を流されると後がない綴木が榎本から1500。しかし、その2は無理押し気味に往かざるを得なくなり、藤田に8000を放銃して事実上脱落。

南3局その1、この段階ではまだ卓内3着の楠橋だったが、リーチ・ツモで2600オール。

 ツモ  ドラ

これで卓内2着に浮上。
南3局その2では榎本から1500.その3では1000オールと小刻みに加点する。
南3局その3終了時の三者の持ち点は、楠橋+16.3、藤田+10.7、榎本▲1.4となった。ここで楠橋が2600オールを引けば榎本を捲くり、卓内トップとなる。ところがその4で思わぬことに……。

南3局その4(ドラ)、楠橋が5巡目に北を放つも3者からは反応なし。8巡目に榎本がをポン。このとき私は(1000点で楠橋の親を流しにいったな)と思っていた。
10巡目の楠橋の手牌、

 ツモ

少考後ここから打。実は榎本の最終手出し(ポンの時)がであることから、はやや厳しい牌。
(まあ、1000点やったら放銃してもええわな)
案の定、榎本から「ロン」
(1000点やな。お互いこれはこれで良しや)
しかし、開けられた手牌は……、

  ポン
の8000!
少し眠気に襲われていたのだが、一気に吹っ飛び目が覚めた。まさかのドラ3。予想外だった。いや、単に私の読みが甘いのか。

ただ、もし榎本が追う立場であるならば、ドラ3は想像出来るし、楠橋もを打つこともなかったと思われる。牌譜がないので分かりづらいかも知れないが、この点棒(ポイント)状況だからこその打と思う。対局後、楠橋は「まさか8000とはなぁ。でもちょっとナメてもうたかなぁ。」やはり、楠橋も1000点だと思っていたようだ。

この放銃で、卓内3着に落ちてしまった楠橋だったが、オーラスは楠橋の1人テンパイで藤田をかわし、再度卓内2着に浮上した。

準決勝B卓はこれまでのポイントが、起家から奥脇幸太(一般) 47.7、森田美津子(一般) 52.0、黒澤耕一郎(T) 38.0、原浩明(P) 35.0

東場で猛連荘した黒澤が一歩抜け出し、それに放銃した森田が脱落。あとは、奥脇と原の2番手争いとなる。

東4局その1、ドラは。南家の奥脇の配牌が、



ここから、東家の原の第1打のをポン。ここからをポンする人はどれくらいいるだろう? ドラがということもあり、牽制という意味での仕掛けと思うが、私には一生できないと思う。この後、をポンしてあっという間に3フーロ。
ただ、手の中はまだイーシャンテン。



3フーロ目のの時の打牌が
その後、黒澤と原のツモが。2人ともに迂回せざるを得なくなってしまった。奥脇の手はが本命と思っているだろう。
原はツモの時にを捨てているが、これは黒澤がを捨てたときに、奥脇から反応がなかったので、通りそうな牌であるという読みからだ。その後、原にタンヤオ・七対子の待ちのテンパイになる。奥脇はチーでテンパイであるがこれをスルー。ツモでカンのテンパイも取らず。ツモ切りをすることでトイトイを匂わせておくことと、を捨てることで他家に楽をさせないためである。そしてポンで裸単騎の。結局3人テンパイとなったが、原・奥脇ともに「まあ良し」であろう。

東4局その2は奥脇が300・500 この段階では、原が卓内2着ではあるが、卓内3着の奥脇との差はわずかに100点である。

南1局その1、ドラは。東家の奥脇が待ち選択となった。

  ポン

普通ならば打とするところだが、奥脇は打とした。あえてシャンポンにしたのは、原の捨て牌にがあるということと、原がテンパイであるならばでロンされることも有り得るということからだろう。これが好判断で森田からのでロンで2900。

南1局その2、ドラは。この局が最終局となった。原が奥脇との差を捲くれるかどうか、差は2800点である。東家が奥脇なので、ツモ和了は500.1000でOK。

まずテンパイしたのは奥脇。

  ポン チー

この時、原はまだリャンシャンテンだったが、9巡目に、



ここでテンパイ取らずの打。理由としては、ツモれば逆転ではあるが、この手をリーチしても奥脇からのでしかあがれないこと、また手替わりして(例えばツモなど)、タンヤオ・ピンフ・イーペーコー(またはドラ)にしておけば、ヤミテンで、しかも誰からでもあがれる形にしておく方が、アガリまでのスピード(準決勝進出の条件という意味で)がいいからである。もちろんをツモでもいい。
12巡目には、



このテンパイとなる。これでもをツモれば問題なし。先ほど述べた手変わりもあるのでヤミテンのまま。しかし、全く手変わりせず、もはやこれまでとばかりに、ツモ1回残しで「リーチ」とした。アガリ牌の残り枚数が1対1であったが、軍配は奥脇に上がった。

こうして、A卓からは、榎本・楠橋。B卓からは、黒澤・奥脇。この4名が決勝に進出した。

決勝戦は起家から 、
榎本将夫(一般)
92.2
奥脇幸太(一般)
51.7
楠橋思(T)
70.1
黒澤耕一郎(T)
77.5


南3局までは楠橋以外の3者はひたすら耐え続けている。ここまでのアガリは5回だが、そのうちの4回が楠橋。内2回はリン牌のドラをツモ。こういうのを見ると、オーラスもあっさりと終わってしまいそうな予感がした。しかし、楠橋に最後の壁が立ち塞がる。黒澤である。

南4局その1、ドラは。  
優勝条件は、楠橋・榎本の2人はアガればOK。奥脇は3倍満ツモ。黒澤はラス親なので連荘すること。
11巡目の黒澤、

 ツモ

ここで打「リーチ」とした。
アガリ優勝が2人いるこの状況であれば、もちろん1000オールでもいいと思う。ただ、それでも「リーチ」としたのは、1000オールをアガっても次局で帳尻を合わせられる可能性が高い。そして何よりも「リーチ」をすれば、楠橋・榎本は余程のことがない限りまっすぐ向かってこられなくなり、その間にあわよくばを引ければというものである。
楠橋と榎本の立場になって考えると、黒澤には放銃したくはない。それをしてしまうと、優勝条件が一気に厳しくなってしまうから。この2人の心理を考えての「リーチ」とも言える。

黒澤のリーチの2巡後、榎本が追いつき、優勝に王手がかかっていた。



待ちではあるが、はすでに4枚場に捨てられており、実質のみ。それでも役がないので、リーチでも良かったかと思うが、榎本はヤミテンを選択。
なぜか? 「黒澤には放銃したくはない」からである。実際に無筋のを引いてきて撤退している。この後、黒澤はツモれずに流局。

南4局その2、ドラは。優勝条件は変わらず。
楠橋が。黒澤がを仕掛ける。
最初にテンパイしたのは楠橋、

  ポン

すぐに黒澤が追いつく。

  ポン

として、カンに受けた。同巡に楠橋はツモでカンからに待ち変え。手広くなったのも束の間。黒澤の次のツモが。 

南4局その3、ドラは。榎本の条件がツモアガリは1000・2000になった。楠橋はアガリ優勝のまま。

最初にテンパイしたのは楠橋。



役がないとはいえヤミテンでいいだろう。テンパイ打のを黒澤がチーしてイーシャンテン。さらにをチーしてテンパイ。黒澤の後ろで観戦していた人はおそらく黒澤のアガリになると思っただろう。
チーの直後にをツモアガリした黒澤の手牌は、

 ツモ チー チー

2局連続で先行テンパイしながら、アガり切れなかった楠橋。この時の心境やいかに。

南4局その4、ドラは。榎本のツモアガリは1600・3200以上。ロンアガリは7700以上。楠橋はアガリ優勝のまま。

またもや先にテンパイしたのは楠橋。



「二度あることは三度ある」のか「三度目の正直」なのか……。今回は後者だった。榎本からが放たれついに決着。楠橋の公式戦初決勝で初優勝となった。

楠橋は前回のビッグワンカップの準々決勝のオーラスで黒澤に逆転負けをして悔しい思いをしていた。それゆえに黒澤に勝ちたいと強く思っていただろう。昨年は2度の大きな怪我と病を患い、なかなか対局できる機会がなく、そんな自分に対する苛立ちとか葛藤があったと思う。優勝スピーチの時に、それらを思い出していたのであろう。最後には涙腺が緩んでいた。

大阪道場から、昨年のイン大阪(牧さん・戸阪さん)と今回の関西インビテーションカップ(森田さん)が準決勝まで勝ちあがられて嬉しくおもっている反面、自分がもっと頑張らなアカンなぁという気持ちもある。次こそは観戦される側にならねば。

最後に、くっしー。ほんまおめでとう。出来れば今度は立場が逆になるのを願うで(笑)


主催者の奥脇武敏さんと優勝者の楠橋思ツアー

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