2005年度ツアー第4戦・μカップin有楽町観戦記
麻将連合ツアー選手・下出和洋
■ルール
リーチに対する一発・裏ドラなし
順位点はトップから順に+12・+4・▲4・▲12
■システム
認定プロをはじめとするシード選手と予選を勝ち上がった選手、合計36名で争われる。
ポイント持ち越しの半荘6回戦。4回戦進出16名、準決勝5回戦進出8名、決勝6回戦進出4名。
(文中敬称略)
※ 文中において(P)は認定プロ、(T)はツアー選手、(LT)は女流ツアー選手、(一)は一般、を表す。

 【決勝戦】

 起家から、佐久間弘行(一、準決勝までトータル46.8)、木村和幸(P、73.6)、桜井一幸(一、61.2)、高見沢治幸(P、41.1)。

 4選手の開始前のコメント。
 日本プロ麻雀協会所属の佐久間は、「頑張ります」
 今年は「雀竜位戦」「無双位戦」の決勝戦にも進出した。たった一言のコメントにも、自信が見え隠れするのは気のせいか?

 木村は、「決勝戦に謳ってもロクな事がないので、頑張りますとだけ言っておきます」
 決勝進出は今回で10回目。さすがコメント慣れしている。優勝コメントもそろそろ聞きたいものだ。

 仙台在住の桜井は、意外な事実を報告。「実は今日μ会員になりました……」
 日頃は日本麻将競技会(会長・青木和久)で腕を磨いている。また、学生時代から競技会に積極的に参加していたこともあって、吉田賞二(T・ビッグ1)、武則輝海(T)といったベテラン選手との交流も深い。

 高見沢は相変わらず煙に巻くようなコメント。「昨日の日本リーグ(中国麻将)で、2回チョンボしまして……」
 麻将だけでなく、日頃の言動も時折その片鱗(全貌か?)を見せてくれる。相変わらず楽しいお方だ。

 さて、東1局その1。6巡目、北家・高見沢が仕掛ける。
  ドラ
 この仕掛けは、宇宙流というよりスーパーデジタルな匂いを感じる。あ、匂いとか言ったら小林剛(P)に怒られそうだ(笑)。
 その直後、親の佐久間が打でリーチ。しかし、宣言牌が西家・桜井の1300点につかまった。
 ポイントが少なめの起家スタートの佐久間にとって、この親流れはかなり痛いはずだ。

 東2局その1。展開が大きく動いた。
 東家・木村が16巡目に少考。南家・桜井、北家・佐久間の仕掛けが入っている。
木村  ツモ
桜井  
佐久間  
 ドラは。木村から見てもキツイところ。両方キツイならば、というわけで打で役ありテンパイにとった。
 17巡目、まだイーシャンテンの高見沢が切った2枚目のを佐久間がポン、打とした。
その動きで、木村ならばオリるであろうハイテイ牌が桜井へと流れ、2000・3900ツモ。
 桜井にとっては「木村とのトップラス」という待望の並びになった。

 流局が2局続いて、南1局その1。北家・高見沢が4巡目リーチ。
 ドラ
 待ちの理由を考えるのは無駄である。でも、下手にいい待ちを探して巡目を浪費するよりは即リーの方がいいのかも、と妙な説得力を感じさせてしまう。宇宙流、恐るべし(?)。
 結果は、すぐさま佐久間に追いつかれ、2900点の放銃となった。しかし、もし高見沢がアガリだったならば、点数だけではなく、精神的ダメージを与えたかもしれない。

 南1局その2は桜井が木村から1000点のアガリ。ここまでの持ち点は次の通り。
佐久間33600 木村24100 桜井39200 高見沢23100
 桜井がウイニングロードを着実に歩んでいるように思えた。
 余談だが、3回戦終了時、運営の稲毛千佳子(LT)に独り言のように、
「今日は一般の人が勝ちそうな気がするね〜。桜井さんとか、薗辺(達哉・一)くんあたり」
と伝えていた。ここまではほぼ予感どおり。とはいえ、今の気持ちは複雑だ。
「木村さんとは同じ麻雀店で働いていたし、高見沢さんにはデビュー直後からなにかとかわいがられているし(思い込みかも?)、佐久間さんとはいろんな研究会で顔を合わせているし……」
 僕にとっては、全員に思い入れがあるのだ。キャリアが無駄に長いと、こういう時に困る。

 南2局その1、東家・木村の4巡目。
 ツモ ドラ
 桜井が2巡目にを切っている。捨て牌の偏りは特に感じない。
いろいろ選択肢はあるものの、打とした。
次巡、ツモで早くもテンパイ。木村は音もなくヤミテン。
リーチする打ち手も少なくないと思う。でも僕は、この手でリーチするのは木村のフォームじゃない、と思った。もっとも、こんなこと言うと、
「君に何がわかるっていうんだい?」
と、木村に独特の口調でツッコまれそうだ。
 すぐさま、当面の敵の桜井から2900点のアガリ。
 点数は高くないが、この放銃が桜井の平衡感覚を揺らすことになろうとは……。

 南2局その2、木村が8巡目に2枚目のをポン、13巡目にをポンして打
   ドラ
 木村が、手役の限定されるような仕掛けを見せると、相手に「木村は苦しそう」というイメージを与えてしまうような気がする。同じ仕掛けを忍田幸夫(P)や小林剛あたりがやっても、全く違和感を感じない。
「じゃあ君は仕掛けるなって言いたいわけ?」
と木村に言われたら「すみません、僕も仕掛けます」としか返事できないけど……。

 一方、南家・桜井は、
 ツモ 打
 役なしから三色に振り替わった。それを西家・高見沢がチー……、しない!?

 これは「メンゼン宇宙流」か?
 しかし、ギャラリーのそんな心配をよそに、すぐさまを引き入れ、マンガンのテンパイが入る。
 16巡目、配牌からオリ気味に進めていたはずの佐久間がチー。なんと、フリテンとはいえテンパイだ。
 
 木村がをツモ切り。いずれにせよテンパイか…、と思ったのもつかの間、桜井がをツモ切り!
 テンパイ維持なら役なしになるとはいえ、全員にほぼ通る切りでよかろう。桜井クラスの打ち手が、まさかドラの出に期待するほど甘い考えを持っていないはずだ。これはもったいない。

 南3局その1でも桜井の変調が続く。
 15巡目、2枚切れのペンで役なしテンパイ。ここでのリーチの是非はどうでもいい。
 高見沢が16巡目にリーチ。桜井はここでもヤミテン。ここでの選択もどうでもいい。
 問題は桜井の最終ツモ。高見沢には無筋である。
「なるほど、こういう牌を切らないためのヤミテンか…」と思いきや、ツモ切ってしまう。
 これが高見沢のメンタンピンに刺さった。これまたもったいない。
 仙台の強豪として鳴らす桜井でも、メンタルの維持がいかに大変かということがよくわかる。

 南4局その1は、アガれば優勝の木村のテンパイ打牌が、高見沢の1500点につかまった。
 そして南4局その2。
 木村はアガれば優勝、親の高見沢はとりあえず連荘が目標。
 佐久間が600・1200ツモ、3200以上のロンアガリ。
 桜井がややこしい。1600・3200ツモ、佐久間から5200、高見沢から6400、木村から12000のロンアガリが必要(ちょっと計算に自信がないけど)。
 1巡目、南家・佐久間がダブをポン。
  ドラ
 その後3巡続けてツモ切り。あと1翻必要だが、道のりは険しそうだ。
 アガリトップの西家・木村の配牌も重い。

 イーシャンテン一番乗りは3巡目の高見沢。

 しかしここから伸びない。その間に佐久間が5巡目にをチー。
 8巡目、佐久間が待望のを引き入れた。
  
 10巡目、佐久間がカンテンパイ。
 同巡、木村も追いついた。ピンフドラ1、待ちは
 佐久間と木村の間で観戦していた僕の心拍数は上がるばかりだ。
 その時の桜井の手はこう。

 そして、桜井がツモ切った牌は…、
 佐久間弘行、公式戦初優勝の瞬間だった。

 終始、主役を演じていたのは、木村と桜井だった。
 影でアヤをつけていたのは、高見沢だった。
 じゃあ、佐久間の勝因は?
 決勝戦だけに関して言えば、少ないチャンスを伺って、最後まで粘り強く戦ったことだろうか。
 しかし、こういう勝ち方は実力がないとできない。では佐久間はどうやって実力をつけたか?
 答えは単純明快。勉強量と練習量の積み重ねだ。
 原浩明(P)主宰のこうめい塾、山口まや(最高位戦)主宰の山口組(おっかない名前だね)など、あらゆる研究会にはほとんど参加し、また、自分の所属団体だけではなく、あらゆる競技団体の公式戦に積極的に参加して、それらを自らの経験値にしているのだ。
 今回、予選も含めて、若手や中堅のツアー選手がだらしなかった(もちろん僕も)。準決勝に残ったツアー選手は、ベテランの奥屋敷敬二(T)だけ。
 佐久間の麻雀に対する姿勢、意識は、ツアー選手、特に若手は(もちろん僕も)見習うべきだ。
ガラスのプライドを確固たる自信に変えるために。