須藤浩自戦記(新世紀第12号より)

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 私の部屋の壁には牌譜が貼ってある。その横には「優勝するまではがさぬ1999年9月」と書かれている。
 これは研究会での牌譜。1998年の9月に私はツアー初優勝を飾ることができた。それから1年後の私の牌譜。
 内容は全11局。私、2局目にオリ打ち。同じく3局目、リーチ者に現物があるにもかかわらずオリ打ち。しかもホーテイでテンパイ取らずで。その後もフラフラで結果ハコラス。せっかくの勉強会を1人でめちゃくちゃにしてしまった。
 こんな牌譜見たくもないが、強くなるための努力を欠かさないよう、自分を戒めるため壁に貼りつけた。
 初優勝してからマージャンのバランスが崩れてしまっていた。それなら崩れついでにと、研究会で話題になった技術を実験してみたりした。それまであまりやらなかった食い仕掛けや、井出プロの手詰まりしない手筋など、新しい技術を吸収しようと。するともうガタガタ。その後どう打っても全く勝てなくなってしまっていた。
 新しいことを始めるのだから産みの苦しみもあろうとある程度の覚悟はしていたが、これほどとは。あまりに負け続けるので精神的にもかなりまいっていた。そこにこの研究会の牌譜。もはや気も狂わんばかりである。何をすれば良いのか。
 相当長い間悩んでようやく気が付いた。「優勝して自分が強くなったつもりになっていたのではないか?」と。そういえば以前より、他人のマージャンを調べなくなっていないか?色々と試してみたが、やはり牌譜の勉強は効果的だと思う。昔は牌を並べていたが、その頃は目で追って終わりにしてしまっていた。
 もう一度やり直さなくては。再び、各人の牌譜を並べることで、徐々に打ち方を考え直していくことができた。
 牌譜を並べるとき大切なのは、自分だったら何を切るかを考えてから、牌譜の打牌を確認すること。もし自分と違ったら何故その牌を切ったのかを考えること。そうしないと、作業が機械的になり頭に残りにくいと思う。そして、少しずつでも毎日続けること。一日間を置いてしまうと、「今日は疲れているし、もう一日位いいか」となってしまいやすい。そしてもう一日が二日三日・・・と。
 ちなみに牌譜は、新世紀やプロ麻雀誌に掲載されているし、本部道場でも半荘1回500円で買うことができる。
 さて大会当日。予選はシードとなり本戦からの参加となった私、牌運にも恵まれ、準決勝までトップ2回、2着3回という好成績。トータル3位で決勝進出となった。
 決勝は起家から、奥屋敷選手、私、大河内さん、久保谷選手。1位から4位までの点差が1万点以内。順位点を考えれば、この回トップを取った人の優勝である。
 まず大きくリードしたのは奥屋敷選手。東2局私の親番で、リーチ・ツモ・三色の20003900。親カブリは痛いが、全員がトップ縛りで攻撃的になるこの半荘では、誰かが先行するのは当然。大切なのはこれ以上離されないことである。他の2人も同じ思いであっただろう。3人の思惑通り、奥屋敷選手に追加点を与えず、少しずつ点差を詰めていく。
 南2局私の親番では、フォームを崩すのと引き換えに身につけた食い仕掛けで1人テンパイ。一気に差は4000点程度に縮まった。
 その後流局が続き、迎えた南3局。供託のリーチ棒が2本出ている所に、5巡目奥屋敷選手リーチ。私が1000点でもアガれば、ほとんど差は無くなる。しかし奥屋敷選手にアガられれば、オーラス10000点以上の差がついてしまい、マンガンツモで届かなくなってしまう勝負処。6巡目私の手牌。

  yyasddkkklnnn,  ドラx

 ここから打lすると奥屋敷選手からロンの声。

  wwwuuujkm,.11  ロンl

 ものすごく痛い1300点であった。「負けるときってこんなものだよな」。奥屋敷選手とは11700点差でオーラスを迎えた。(ハイライト牌譜参照)

 配牌でハネマンが見えなくもないがやはり苦しい。久保谷選手の連荘期待かと思いながら手を進める。
 と6巡目、奥屋敷選手から予期せぬリーチが。もちろん奥屋敷選手はこれをアガれば優勝。しかしこのリーチ棒のおかげで、私の条件が5200点直撃かマンガンツモでOKになったのである。そのときの私の手牌はこう。

  rruooadfgklm, ドラd

三色かイッツーか、いずれにしても苦しいが、「ちょっと待っていろ。すぐ追いつくから」とヤル気全開に。
 そして2巡ツモ切りを挟んでからのツモが素晴らしかった。牌譜を見てください。ツモ.直前に奥屋敷選手に打たれたラス牌のiそしてjを一発でツモアガリ!の3連続。あっという間の大逆転劇となった。
 しかし今回のミューカップを振り返って、技術的な問題点はまだまだ多かったと思う。そのため部屋の牌譜は、まだはがしていない。そして「優勝するまではがさぬ」の頭に一言書き加えた「もう一度」。
 これからも、より一層がんばります。

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